デニムのデッキパンツ その6

4thサンプルは3rdをベースに縫製方法まで変える事にしました。


とにかく楽に穿ける事を1番に考えて、

縫製方法の見直しはこれまでに何度したかわかりません。

うちの服は全てがシングルステッチ。

フルシングルで作られてる服は今、流通してる服にほぼありません。


壊れる部分を減らす、それでいて壊れたら楽に直せる構造。

ここに重きを置いて構成してるので50年後にでも

修理屋か、作り手が見て何かを感じてくれれば嬉しい。

維持費がかからない事も修理屋の服のポイントです。

今回のパンツは特にそこのこだわりを強く表現しました。

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そしてこれが4thサンプルです。

デッキとしては初めてのボタンフライである事、

ポケットの構造が単純なので修理が楽である事、

そして脇の縫製にこのパンツへの挑戦が込められています。

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これまた2日に1回は穿いてるのですでに穿き込まれてます。

なので新品とはすでに色落ちが出てるので雰囲気が違います。

それよりもぜんぜん色が出てないのが残念…


今回のパンツの最も変化球なポイントはサイドの作りです。

通常、耳付きのパンツですとセルビッチを生かして脇まで持ち上げで、

ロックでまとめて、ステッチを乗せて終わりです。

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このパンツは脇割のまま上まで持ち上げて、

カットした部分だけをロックでまとめて、そのままウエストベルトにインします。


これで脇のゴワつき感がほとんどありません。

バックヨークが無い事と相乗効果で今までに味わった事のない、

まるでジャージのように穿きやすいパンツになりました。

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デニム素材のパンツでこのような縫製方法は見た事がありません。

これぞ修理屋にしか作れないパンツです。

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パターン数を減らし、縫製箇所を減らす事でストレスを減らす方法は

効率的でないし、取れ高も悪いし、無駄な生地を出す。


それよりも自らの考えを表現する事がうちのアイテムの持ち味なので

その辺は考えてません。


今までの経験から縫製の少ない服の方が壊れにくいです。

こう書くと淡白でつまらない服になりそうですが、

ぜんぜんそんな事はありません。

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ポイントになるボタンは今回、直し屋オリジナルで作りました。

今、手に入るボタンはかなり見てきましたが良いのが無い。

あくまでも好みの問題ですが…


好みのボタンが廃盤になってからモヤモヤしてましたので

廃盤ボタンの型を使って材質、色を別注で作りました。

なのでこのボタンはうちにしか無いオリジナルボタンです。


うちのように小さな規模のお店でボタンまで作って、

しかもそれが伝わらない無刻印…

「NAOSHIYA」と入れれば喜ぶ方もいるかも知れませんが

無刻印で素材の良さ、仕上げの良さを楽しんでいただきたかった。

刻印入りって子供っぽくなるからあまり好きじゃ無いってのもあります。

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ここまでに気づいてる方はほぼいないと思いますが

ボタンのサイズが全て同じです。


これには理由があります。

私は指の使いすぎで数年前よりも思うように右手の指が動きません。

腱鞘炎と言うか、常にその手前みたいな感じです。


なので小さいサイズのボタンは使いにくい。

指の太い人は同じような使いにくさを感じてると思うので

全部が同じサイズで構成しています。


それと3rdまではステッチの太さが30番の糸でしたが

4thから20番の糸にしました。

ちょっと太くしたって事です。

多くのジーンズの裾チェーンステッチに使われる太さと言うと

伝わりやすいですかね。


ですが、

20×20番の糸だと弱テンションのデニムと相性が悪い。

20×30で部分的に20×20にしてます。

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この問題は裾の仕上げでも最後まで悩ませてくれています…

糸の引く力が強すぎて、チェーンステッチで仕上げると

引っ張りすぎて「アタリ」が出すぎちゃう。


今回の裾は仕上げがどんどん変わってる。

幅広のダブスステッチ→LEE幅のシングルステッチ→APC幅のチェーンステッチと

見た目と着用感のバランスで変更をしました。


3rdからいろいろ挑戦してますが糸の組み合わせが

まだ仕上げが決定してません…


最終決定の「APC幅のチェーン」が一番難しい。

一般的にはアタッチメント(ラッパ)にセットして縫います。


これは幅が均一に縫えて、量産では絶対に使われてます。

多くのジーンズショップの丈上げにも使われてますが、

当店はラッパなしの「手曲げ」で縫います。


これはLEVISでも各年代で幅が違うし、LEEはそれよりも太いとか、

現物あわせで調整するのでラッパを裾幅ごとにセットし直すよりも

感覚で縫う方が数倍早いからです。


20年近く手曲げでしかチェーンを縫ってないので

この方法をさほど苦痛に思ってませんが慣れてない人だと不安定で、

下手で慣れるまでにかなり時間がかかるはずです。


しかも今回の「デニムのデッキパンツ」は

全て当店で裾の仕上げを縫います。


弱テンションデニムで「APC幅のチェーン」

通常のデニムとは糸調子のバランスを変えなくては縫えないし、

量産でそれをやるのは無理だったので全て自分で縫います。


と言う事で4thでサンプルは終わり、本生産。

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のはずでしたがセルビッチの幅が改善されてなかったので

残念ながら5thサンプルが決定し、発売が早くて5月末になった訳です。


先ほども同じ写真を掲載してますがちょっと幅が太いので修正します。

と言うか修正されてませんでした。


物作りは簡単ではありません。

こだわればこだわるほどって事ではなく、

このように工場とのコミュニケーションも大きく関わってきます。


1人の人が縫い上げるスタイルの方が

当店のオリジナルには向いてると思います。


オーダーメイド的アイテムの魅力を十二分に理解してますが

このパンツは量産服を作って販売してます。


ジーンズとは大量生産された消耗品であり、使い捨てる物。

古いリーバイスのジーンズが高額で取引される事を

誰が望んでいるのか?


比べるには大企業すぎますが

あくまでも日常着を作ってると言う意味では、

量産という物を意識して作る事に意味があると思っています。


最終5thサンプルは見た目がほぼ4thですので

製作日記はこれにて完結。


次回その7で最終を紹介しますがその前に

土曜日からアポイント制での販売が始まります。


部屋着としても穿きたくなる着用感。

もうこれを穿いたらいわゆるジーンズには帰れません。


その7につづく

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デニムのデッキパンツ その5

そんな流れで動いた3rdサンプルがこれです。

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基本的な作り方は1stサンプルに戻して初心に戻る。

生地を変えた3rdなのに1stと言うか、1stなのに3rdが完成です。

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これを穿いてこの方向転換が正解だと確信します。

このメンフィスコットンの11オンスデニムがものすごく良い。


いわゆるジーンズに使われるデニムは13〜14オンス。

密度が高い織り方をしてるのに対して、

このデニムは弱テンションって織り方。

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簡単に言うとゆるく織ったふわっとしたデニム。

それで11オンスと公表されてますが13オンスくらいに感じる質感。


洗いたてはデニムっぽいのにすぐに伸びるところが伸びて、

とにかく運動性が高いから着用感がストレス少ない。


縦の縮みはイメージくらいの寸法で、横は伸びるから

次はこれを穿いてサイズ感の見直しになります。

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この生地にはこのボタンじゃないなあ。

そこでボタンも作る事に。

こうなったら手抜きなしで今出来ることは全部やる。

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ピスネームの入れ忘れ。

サンプルって依頼が全て表現されない事が多々あります。

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この写真は私がさんざん穿いてるので色落ちしてます。

コロナには洗濯が有効との事なので着用毎に洗っています。

なのですでに20回は洗ってるサンプルです。


これで4thサンプルの製作が決まります。

この段階で4月の販売も諦めてますので

納得できる物を作ろうと完全に腹をくくりました。


その6につづく。

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デニムのデッキパンツ製作日記 その4

2ndサンプルの完成から少しした頃。


これで予定してた2月の販売が流れたんですが、

さらにとてつもない行動に出ます。


年末、生地屋さんの展示会に行ったんですが

そこでこの企画を根底から変える出会いがありました。


多くの新作生地の中で

誰も見てないデニムに引き込まれる。


それは11オンスのデニムでシルバーのセルビッチ付き。

面白いなあと思ったら質感も良い。

説明によるとアメリカはメンフィス州のコットンを使って、

日本で織られたデニムであると書いてある。


これは洗って見たいなあと

サンプルを取り寄せて、洗って、確信する。


1stで感じていた違和感の正体に。

これまでのサンプルはどこか古っぽい匂いがする。


これは悪い訳ではない。

でもそれが違和感の正体だったんです。


私が作る服の根底にあるものは

当店のフィルターを通過しないと存在しない服。


修理屋の仕事って壊れた原因を探す事がスタートラインであり、

物作りのバトンを次の世代に繋げるのが私の仕事だと思っている。


なので当時のような縫製で服を作る事は考えていません。

ビンテージの縫製って言われる多くは量産都合の縫製です。


100年前のジーンズ、80年前のジーンズ、50年前のジーンズが

何を教えてくれてるかってヒゲとか縦落ちなんかじゃないと思ってる。


どういう作り方をして、どうやって穿くと、どのように壊れるのか。

それを修正していく作業が修理屋の使命だと思う。


要するにファッションブランド、レプリカ屋さんが作る服とは

根本的に違う服の作り方を形にするのが修理屋の服作り。

時計の針を戻すのは服屋、時計の針を進めるのが修理屋。


ここで大きく方向転換する事になります。


私は服を着る事で面倒な行為を増やしたくない。

だからビンテージを着る事はほとんどありません。

家に帰ったら着てる服を洗濯機に投げ込んで洗いたいから。


基本的に当店の服は気軽に着れる事が一番。

そこに戻ってもう一度最初から作り直す事にしました。


なので3rdサンプルでありながら、

1stサンプルと打ったタグを付けた次のサンプル作りを始めます。


やり直しのサンプルは

3月の納品すら諦める事を前提に動き出します。


そしてこのブログもいつ終わるんだか…

ゴールがまだ見えてません。


その5につづく
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